口数の少ない歯科医師と、けんか口調の歯科衛生士

私が歯医者にかかるようになったのは、仕事中に交通事故に遭い前歯が脱臼、骨折したからでした。

子供のころから虫歯もなく、1度もかかったことのなかった私にとって、歯医者は自分には縁のないところ、くらいの感じで、まさか数が月も通院することになるとは、思ってもいませんでした。

かかるようになったきっかけが、仕事中の事故だったこともあり、私には歯医者を選ぶ時間的な余裕も権利もなく、職場の上司に連れて行かれるがままに、歯科の診療をしている総合病院を受診しました。それまで私は、歯医者が総合病院に入っていることも知りませんでした。

そんな状態での受診でしたので、当然のごとくその歯科の評判もまったくわかりませんでした。事故での緊急の受診でしたので、診察時間もかなりすぎていました。

初めての歯医者で、事故のショックも残っているなか、口を開けたままの状態の私は一言もしゃべれません。

歯が折れていることは、素人の私にも安易に想像できました。しかし折れているのが1本だけなのか、2本なのか、ほかの歯は大丈夫なのか、歯科医師はなかなか教えてくれません。「ん〜、ほ〜」とちいさな声でつぶやくばかりでした。

歯が折れているので自分から詳しく聞くこともできず、歯科医師の言葉を待っていると、ぼそぼそと喋りました。どうやら2本骨折、2本脱臼でした。その日は腫れがあるので診断のみで帰され、それから数箇月の通院が始まりました。

それ以後もその歯科医師が担当を続けました。こちらは口を開けたまま治療を受けます。小さな声で治療についての説明もされますが、よく聞き取れません。しかし口が空いたままなので、聞き返すこともできません。

歯科衛生士の年配の女性も、歯科医師の指示が聞き取れないのでイライラしつつ聞き直します。すると歯科医師も不機嫌になります。

不機嫌になった歯科医師はますますぼそぼそと喋り、歯科衛生士の口調もだんだとキツくなっていきます。

2人も大人ですが患者を挟んでの、軽い口喧嘩でした。普通は治療が嫌がられる歯医者ですが、私は完治するまでの数箇月間、歯科医師と歯科衛生士の口喧嘩が1番嫌でした

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